作成者:加藤 舞
トラジャコーヒー、マナド、マカッサル・・・インドネシアに駐在している方であれば、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。多数の島々で構成されるインドネシアの真ん中にある「K」のような形の島、スラウェシ島。冒頭3単語は、「スラウェシ島といえば」の代名詞です。マイナー中のマイナーと言えるこの島で約1年を過ごした経験から、観光地ではない、スラウェシ島の魅力をお伝えしていきます。
インドネシア国内では4番目、世界では11番目に大きな面積の島ですが、外国人観光客はあまり訪れず、行き先もマナドやマカッサルなど場所が限られています。その理由は一重に、不便だからです。大きな島にも関わらず、道路には陥没箇所や砂利道、幅の狭い道も多く、インフラ整備が進んでいない場所が多々あるため、移動にかなり時間が掛かります。比較的有名な観光地「マナド」や「マカッサル」は、南端と北端に位置し距離があるため、島内ではありますが、一度に両方訪れようとする人はまずいません。もう一つの有名な観光地「トラジャ」は島の真ん中に位置しますが、マカッサルから約300km(東京~名古屋くらい)、車で8時間以上。毎日バスが大量に出ているため行くことはできますが、お尻が痛くなるのは必至です。
<出典>:https://indonesia-corner.com/sightseeing/sulawesi/index.html
無論、交通インフラだけでなく、水道、電気などの経済インフラや、医療、福祉などの社会インフラにも、今後早急に改善されるべき課題が多くあります。そんな日本の一昔前?のような生活環境が残る島では、不便さに目を向ければ切りがありませんが、ならではの魅力もたくさんあります。
私が約1年過ごした町「Sengkang(センカン)」は、スラウェシ島南部のワジョ県という地区にあり、マカッサルから約200km、車で5時間ほど北進した場所にある町です。この辺鄙な田舎町での生活から見つけた魅力を3つほどご紹介します。
- 水上家屋(Rumah Mengapung)
センカンのすぐ左隣にテンペ湖(Danau Tempe)という大きな湖があります。その湖には家屋を建て暮らす人々がおり、モーター付きのボートを湖上の移動手段としています。実際に人が暮らす家ですが、スラウェシ島内でも日常から離れる憩いの場として訪問する人が多々おり、家主はいつでもPisang Goreng(バナナ揚げ)や紅茶、コーヒーなどを提供し迎え入れてくれます。
この面白さは、日常的に「家が動く」ことです。強風が吹くと家が動くため、軒先に座って寛いでいると、徐々に見える景色が変わるのです。木材やドラム缶、ポリスチレン等で家を浮かせており、湖底の係留ポールにロープを繋ぐことで、水上の家屋を固定しているそうです。そのため、固定しているとは言え、ポールの周りをロープの長さが許す範囲で360度動きます。決して安全とは言えませんが、インドネシアの研究家の間では、住民たちの生活の工夫から構築された実に興味深い構造の家屋だ、と言われているのだとか。
もし訪れることがあれば、夜は電気が少なく真っ暗なため、14時~17時くらいの、夕日を少し眺められる時間帯が良いかと思います。
出典:Danau Tempe di Sulawesi Selatan: Sejarah, Daya Tarik, dan Kedalaman
2. 伝統家屋アタッカエ(Rumah Adat Atakkae)
その昔、スラウェシ南部にはブギス民族と呼ばれる人々がおり、彼らはいくつかの王国を築いていました。現ワジョ県はワジョ王国と呼ばれ、14世紀頃からオランダ統治下に入る前の1900年頃まで、合議的な王政制度で統治されていました。
その時代の伝統家屋が「アタッカエ」と呼ばれます。2023年、それらの伝統家屋を改修・整備・保護するために国家予算が投入され、「アッタカエ伝統家屋観光地区(Kawasan Wisata Rumah Adat Atakkae)」が整備されました。約1,100ヘクタールの敷地にワジョ県各地のアタッカエが集められ、観光体験エリアとして島内観光地となっています。
アタッカエはいわゆる高床式木造建築なのですが、エリア内中央にある一番大きな建物はサオラジャ(Saoraja)と書かれ、王の家(=王宮)とされています。太い丸柱が100本以上使われていることが一番の特徴で、建物内に足を踏み入れると、現代でも文化・歴史の重みや誇りを肌で感じられます。
エリアへの入場料が10~20円ほどかかりますが、地元民の結婚式会場に使用されたり、日中は遠くまで見通せる広大な広場で遊んだり、夕方は日が沈むのを眺めたりと、毎日訪れる人は多いようでした。
3. ブギス語(Bahasa Bugis)
最後は、場所ではなく言語を紹介します。インドネシアは700以上の言語が話されているとされる多言語国家としても有名ですが、私の暮らしていたワジョ県もその一つであり、ブギス語を使用しています。学校やビジネスのような場面ではインドネシア語を使用しますが、私生活ではブギス語で会話するため、初めて耳にする人は、インドネシア語との違いにきっと驚くでしょう。
例えば、よくインドネシア人が挨拶かのように使うこの言葉;
「ご飯食べた?」:インドネシア語・・・「Sudah makan?(スダ マカン?)」
ブギス語 ・・・「Purani Mandre?(プラニマンドゥレ?)」
少しだけ似ている部分もあるような?気もしますが、その他には、
「こっち来て!」:インドネシア語・・・「Ayo ke sini!」など
ブギス語 ・・・「Jokko no mai(ジョッコノマイ!)」
「いやだ、欲しくない(=I don’t wantの意)」:
インドネシア語・・・「Tidak mau」など
ブギス語 ・・・「Dewelo」
などなど、お分かりの通り、ほとんどがインドネシア語とは似ていません。スラウェシ島南部を訪れることがあれば、ぜひ現地人の会話に耳を傾けてみてください。「ジョッカジョッカ(行くよ行くよ)」とか「デー(ちがーう)!」などと会話していれば、それはブギス語です。標準のインドネシア語も問題なく伝わりますため、ご安心ください。ただし、英語を話せる人はほとんどいないため、観光ならば現地ガイドと動くことをお勧めいたします。
長くなりましたが、まだまだ未開発な分野の多いスラウェシ島南部について、少しでも興味を持っていただく機会となりましたら幸いです。スキューバダイビングのおすすめスポットや地元の名物料理など、ご紹介したいこの島の魅力は沢山あります。見聞きすることの少ない、南部以外のエリアにおけるビジネスの可能性などにも触れながら、またブログに綴ることができればと思います。
現在スラウェシ島に進出している企業は中華系企業がほとんどですが、弊社では進出前の段階からアドバイス等の支援をさせて頂いております。ご相談頂けますと、サポートできることはあるかと存じます為、ぜひお気軽にお問い合わせください。