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第17回  JAC’Sブログ
インドネシアにおける暗号資産

2025. 10. 3 | JAC'sブログ

作成者:小川 翔司

皆さま、こんにちは。

当ブログをご覧いただき、ありがとうございます。

Japan Asia Consultantsの小川です。

「突然ですが、普段の生活で投資はされていますか?」

こう聞くと少し怪しげなセミナーの勧誘のようにも響きますが、日本ではここ数年、「老後2000万円問題」や「新NISA」の登場をきっかけに、個人による投資がますます活発になってきていると感じます。そうした流れの中で注目を浴びているものの一つとして、暗号資産があげられます。そしてこの動きは、インドネシアも例外ではありません。

そこで本記事では、インドネシアにおける暗号資産の現状や税制について、日本との比較も交えながらご紹介いたします。

  • 暗号資産とは

まずは「暗号資産とは何か」から簡単に触れてみたいと思います。インドネシア語では正式名称としてAset Kripto、日本では仮想通貨と呼ばれることが多いです。難しい定義は割愛しますが、簡単に言えば「インターネット上でやり取り可能なデジタル資産」とイメージすればわかりやすいかと思います。代表例としてはビットコインやイーサリアムなどがあり、皆さまも一度はお聞きになったことがあるのではないでしょうか。

ひと昔前までは、暗号資産といえば怪しい印象を持たれたものですが、近年ではビットコインを中心に、暗号資産が広く受け入れられてきたと感じます。例えば、

  • 2021年:エルサルバドルがビットコインを法定通貨として採用
  • 2024年:ニューヨーク証券取引所に現物ビットコインETFが上場
  • 2025年:アメリカ政府が「戦略的ビットコイン準備金」の創設構想を発表

といった具合に、世界的な受容を示す出来事が続いています。

  • インドネシアにおける現状

インドネシアにおいても、暗号資産は合法的な投資商品として取引が許可されています。ただし、暗号資産は投資商品の一つであり、決済手段としての利用は禁止されています。もともと暗号資産は、商品先物取引監督庁(Bappebti)の管轄下で「コモディティ」として扱われていました。つまり、金や石油などと同じ分類です。しかし、2025年1月から金融サービス庁(OJK)へ管轄が移管され、デジタル金融資産としての再定義が進められています。

インドネシア国内における、暗号資産の市場規模も拡大しています。2024年1月~11月の現物取引額は、前年比3倍以上の556.53兆ルピア(約5兆円)に達しています。また、取引所の合計登録口座数も2024年11月時点で2,200万口座に達しており、市場の裾野が広がっていると考えられます。

「実際にどこで取引できるの?」と思われる方もいらっしゃるかと思います。そこで、インドネシアでよく利用されている代表的な取引所を2つご紹介いたします。取引をお考えの方の参考になれば幸いです。

1.Tokocrypto

2018年に設立された比較的新しい取引所で、取引量・知名度ともにインドネシアでトップクラスとされています。2022年には世界最大の取引所であるBinanceに買収され、同グループに加わりました。

2.Indodax

2014年に設立されたインドネシア最古参の取引所です。「国内取引所といえばIndodax」と考える人も多く、ユーザー数は国内最大とされています。

  • 税制の最新動向と日本との比較

暗号資産の購入や売却は投資(人によっては投機というかもしれません)として行われるものですので、多くの人にとって気になるのは、やはり税金の取り扱いかと思います。インドネシアでは、2025年8月1日施行の財務大臣規程PMK-50/2025により、暗号資産に関する税制が改正されました。ここでは、ユーザーの税務を中心に整理します。

  • 付加価値税(PPN)

暗号資産の売買そのものはPPNの対象外です。ただし、取引所に支払う手数料などにはPPNが課されます。税率は12%ですが、課税対象額は手数料などの12分の11と定められているため、実質的な税率は11%となります。計算例は以下のとおりです。

手数料額:1,200ルピア

課税対象額:1,200ルピア×11/12=1,100ルピア

PPN:1,100ルピア×12%=132ルピア

  • 所得税(PPH)

暗号資産売却の際には、PPH22が課されます。国内の取引所を利用する場合、税率は取引額の0.21%になります。分離課税(いわゆるファイナルタックス)にあたるため、取引時に源泉徴収され、確定申告は不要です。国外の取引所を利用する場合は税率が1%となり、インドネシア税務当局が税務徴収義務者に指定していない取引所の場合は、確定申告が必要となります。ポイントは、所得税は「利益」でなく「取引額」に対して課税されるという点です。つまり、損失が出ている場合でも課税が発生することに注意が必要です。

参考までに、製造業や商社の方々は、輸入に伴う前払法人税としてPPH22を目にしたことがあるかもしれません。実際には、PPH22は輸入時のみでなく特定の国内取引にも適用されるケースがあり、上記はその一例と言えます。

一方、日本の税制はインドネシアに比べて複雑と言えるかと思います。暗号資産取引で得た利益は雑所得として扱われ、所得税と住民税が課税されます。住民税は10%ですが、所得税は総合課税による累進課税制となっているため、最高税率は45%になり、合算すると最大55%にもなります。また、他の種類の所得と損益通算ができないことや、株や外国為替取引のように損失繰越控除が認められていないことから、厳しい税制であるとも感じます。金融庁が2026年度の税制改正において申告分離課税の導入を要望している段階のようですが、一個人としても期待したいところです。

暗号資産への理解は、投資だけでなく、最新テクノロジーや国際動向を知るきっかけにもなります。本記事を通じて、少しでも暗号資産に興味を持っていただければ幸いです。

なお、弊社では会計や税務をはじめとする各分野において、日本企業の皆さまの現地事業をご支援しております。税務分野においては、法人・個人のお客さまの税務申告もサポートしておりますので、お困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。

参照:

https://bappebti.go.id/siaran_pers/detail/15717?utm

https://ojk.go.id/id/berita-dan-kegiatan/siaran-pers/Pages/Bappebti-Kemendag-Alihkan-Tugas-Aset-Keuangan-Digital-termasuk-Aset-Kripto-serta-Derivatif-Keuangan-kepada-OJK-dan-BI.aspx