作成者 :江原 早紀
いつも大変お世話になっております。JACの江原でございます。
2月末以降、イラン・アメリカに関する報道が日々注目を集めており、弊社のお客様からもこれらの情勢に関連したご相談をいただく機会が増えております。日本にいても、インドネシアにいても特に気になる点の1つは生活に直結する原油価格かと存じます。多様な報道が出ている中、3月25日には、日本の経産省がガソリン価格の全国平均を177.7円、最高値は沖縄県の227.1円、次いで長崎県・宮崎県の187. 2円と発表しました。さらに3月29日には「ホルムズ海峡を通過しないルートで日本へ運び込まれた中東産原油の荷揚げ作業が愛媛県内の製油所で始まった[1]」との報道がありました。日本の状況は徐々にイメージできるようになっていますが、一方でインドネシアに関連した影響等について、本ブログでは、調べてみたことをかみ砕いてご説明できればと思います。
・元来ホルムズ海峡を通過する原油の量は?
ホルムズ海峡は世界の原油の約20%(=約2,000万バレル/日)が通過する非常に重要な地域です。米国エネルギー情報局(EIA)の統計[2]によると、日本は約250万~300万バレル/日の原油を輸入しており、その約95%以上が中東に依存しています。約220万〜270万バレル[3]/日がホルムズ海峡を経由して日本へ輸入されています。イメージしやすいように細くすると、1バレル=158.987リットルであり、一般的なタンカーは1隻で約200万バレル(約30万トン)を輸送できるそうです。これほど大規模な輸送が制限されることから、日本では国内需要の241日分を確保している備蓄の活用が開始されています。[4]
一方、インドネシアでの輸入量は約35万バレル/日で原油輸入の約20~25%がホルムズ海峡を通過しており[5]、約7万~9万バレル/日がホルムズ海峡を経由していると推計されます。割合としては日本よりも低いものの、インドネシアにおいてもホルムズ海峡は依然として重要な輸送ルートであることが分かります。
〈日本・インドネシアの原油輸入量と割合〉
| 日本 | インドネシア | |
| 輸入量/日 | 約250万~
300万バレル/日 |
約35万バレル/日 |
| ホルムズ海峡を通過する割合 | 約95% | 約20~25% |
| ホルムズ海峡を通過する輸入量 | 約220万〜
270万バレル/日 |
約7~9万バレル/日 |
3月13日付けのインドネシアのAntaraニュース[6]では、ホルムズ海峡でインドネシア人船員3名が行方不明となり、24時間体制で捜索が続けられていると報じられています。タグボートでの爆発事故によるものであり、3月30日時点でもなお行方不明となっています。
・3月末時点でホルムズ海峡を通れる船はあるのか?
そもそも、ホルムズ海峡は、国連海洋法条約(UNCLOS)に基づき、すべての国の船舶に対して「通過通航権(transit passage)」が認められている国際海峡であることから、特定の国のみが通航できるといった制限はなく、原則としてすべての国の商船やタンカーが通航可能とされています[7]。ただし、イラン情勢の緊張状態による①船舶への攻撃や拿捕のリスク、②航行保険料の上昇、③航路変更や警戒強化といった影響から、通行は可能であるものの、リスクが高い状態となっています。一部報道によれば、ホルムズ海峡周辺に停留する約1,900(海域内は約300隻)の船舶が安全性を鑑みて立ち往生している状態です。通常であれば、1日120~130隻程度が通過できるところ、3月中旬時点では5~10隻に減少[8]しており、今後もこの混乱は続くと予想されます。
またロイター通信によると、インド・トルコ・中国などの船舶は通航を継続しており、イラン側も米国・イスラエルと直接関係のない船舶については通航を認める姿勢を示しています。インドネシアはというと、27日時点では国営石油会社プルタミナのタンカー2隻がまだホルムズ海峡で停留しており、通過に遅れが生じていると報道されています[9]。
・あとどれくらいの期間で生活に影響が生じるのか?
原油価格の上昇は、まず小売り燃料価格に波及し、次に輸送費/食費/その他の消費者物価に広がると整理されます。ただし、そのスピードは各国の価格制度によって異なります。一般的に、日本は市場連動の影響が強く、インドネシアは政策調整の影響が大きい構造とされています。
日本の場合:学術研究によると、原油価格が上昇した場合、ガソリン価格には数日〜2週間程度で反映されることが確認されています。例えば、日本のガソリン価格を日次データで分析した研究では、価格の反映は非常に速いとされており、実際に原油価格の変動から約2週間程度で値上げが確認された事例も報告されています[10]。その後、輸送費や電力コストの上昇を通じて、食品や日用品の価格にも影響が広がります。国際機関の分析では、こうした影響は1〜3か月程度で生活コスト全体に波及するとされています[11]。
| ガソリン価格への影響 | 数日~2週間程度 |
| 生活コスト全体への影響 | 1~3か月程度 |
インドネシアの場合:一方、インドネシアでは、日本とは少し異なる動き方をします。燃料価格は政府の補助金や政策によって調整されるため、原油価格が上昇しても、すぐに生活に影響が出るとは限りません。実際の研究では、燃料価格が引き上げられた後、インフレ(物価上昇)が顕著に現れるのは数週間〜1か月程度後とされています[12][13]。さらに、その影響は段階的に広がり、食品や生活費への影響は1〜3か月程度で見え始めるとされています。また、発展途上国ではこの影響が長引く傾向があり、インドネシアの場合も、物価への影響が半年〜1年以上続く可能性が指摘されています[14]。
| 燃料価格改定・インフレへの初期影響 | 数週間~1か月程度 |
| 生活コスト全体への影響 | 1~3か月程度で見え始める |
| 影響の持続 | 半年~1年以上続く可能性 |
ホルムズ海峡の不安定化は、エネルギー供給のみならず、企業活動全体に影響を及ぼし得る重要なリスク要因です。日本は中東依存度の高さから短期的なコスト上昇に直面しやすく、インドネシアにおいても時間差を伴いながら事業コストへ波及する可能性があります。特に物流費や原材料価格の上昇は、収益性や価格戦略に直接的な影響を与える点に留意が必要です。今後の国際情勢を踏まえ、エネルギー価格の変動を前提とした柔軟な経営判断が、これまで以上に求められる局面が増えると考えられます。
[1] https://news.yahoo.co.jp/articles/f595b0448513109b544ff7d3e66e6565268685bd (2026.03.30閲覧)
[2] U.S. Energy Information Administration
[3] https://www.eia.gov/international/analysis/country/JPN (2026.03.30閲覧)
[4] https://news.yahoo.co.jp/articles/685bfaf0295991a512f192166d816129f20aad7a (2026.03.30閲覧)
[5] https://inp.polri.go.id/artikel/indonesia-shifts-crude-oil-imports-to-us-amid-middle-east-crisis
[6] https://www.antaranews.com/berita/5474222/kemlu-pencarian-3-wni-hilang-di-selat-hormuz-masih-berlanjut (2026.03.30閲覧)
[7] https://www.un.org/depts/los/convention_agreements/texts/unclos/unclos_e.pdf (2026.03.30閲覧)
[8]https://www.jiji.com/jc/article?k=20260311048594a&g=afp#:~:text=%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%A0%E3%82%BA%E6%B5%B7%E5%B3%A1%E3%82%92%E9%80%9A%E9%81%8E%E3%81%97%E3%81%9F,%E6%97%A5%E9%96%93%E3%81%A7%EF%BC%9A%E6%99%82%E4%BA%8B%E3%83%89%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%B3%E3%83%A0 (2026.03.30閲覧)
[9] https://www.nna.jp/news/2908152 (2026.03.30閲覧)
[10] https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0140988321001195?utm_source=chatgpt.com (2026.03.30閲覧)
[11] https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0140988317302116?utm_source=chatgpt.com (2026.03.30閲覧)
[12] https://documents.worldbank.org/en/publication/documentsreports/documentdetail/099748505212431959?utm_source=chatgpt.com (2026.03.30閲覧)
[13] https://smeru.or.id/en/file/6023/download?token=rB5hDIjh (2026.03.30閲覧)
[14] https://ideas.repec.org/a/eee/eneeco/v108y2022ics0140988322000895.html (2026.03.30閲覧)