作成者:渡邊 陸斗
スマートフォンの登場以降、IT技術は急速に発展を遂げ、近年ではOpenAIをはじめとするAIが私たちの生活をより便利なものにしてくれています。これはインドネシアも例外ではなく、TokopediaやShopeeといったオンラインショッピングサイトの普及をはじめ、e-faktur、Core-Tax、OSSオンラインシステムといった行政サービスにもITが広く導入されるようになりました。
特に、少子高齢化が進む日本と比べ、若年層が多く人口の多いインドネシアでは、IT化が日本以上に進んでいる側面もあります。その一方で、インフラ面においては課題も多く、発展のスピードに制度や設備が追いついていない現状も見受けられます。
今回は、そんなインドネシアのIT事情についてご紹介したいと思います。
インドネシア工業省は、2018年4月に「Making Indonesia 4.0」という第四次産業革命に向けた国家戦略ロードマップを発表しました。その中では、デジタルインフラの整備やIT教育の強化が政策の柱とされています。
また、2019年から2024年の教育・文化・研究技術省の大臣は、インドネシア最大のユニコーン企業「Gojek」の創業者であるナディム・マカリム氏が務めており、ITスキルを持った若年層の労働力が年々増加しています。人件費が日本と比較して低いため、インドネシアはオフショア開発の理想的な拠点と見なされることもあります。
こうした人材面の強みに対し、ITインフラの脆弱さや不安定さは大きな課題です。たとえば2023年の調査では、インドネシアのモバイルインターネット速度は平均25.0Mbpsと東南アジアで下位3位に入り、特に地方と都市部との間で大きな格差があります。また、日本では普及している5G通信に関してもインドネシアでの普及はまだ初期段階にあり、政府と民間企業が連携しインフラ導入と技術導入を進めている段階です。
政府機関のITシステムに関しては、中央政府と地方自治体の間での連携が不十分であり、データ共有の遅れが課題となり、弊社においてもシステム関連の連携不足によるトラブルも少なくありません。
さらに、ITの利便性が進む一方で、さまざまなリスクも顕在化しています。インドネシアの人口構成を見ると、最も多いのは10〜14歳の子どもたちで、次に15〜19歳、そして20〜24歳の若者たちです。彼らはいわゆる「デジタルネイティブ世代」であり、インターネットに対する価値観やその使用方法は従来と大きく異なっています。
しかしながら、ITの急速な進化に教育が追いついておらず、ITリテラシーの不足が指摘されています。これは企業においても同様で、情報セキュリティに関するリスクが多く見られます。たとえば、会社のPCに個人のアカウントでログインすることや、個人のWhatsAppで業務内容や会社情報をやり取りすることが日常的に行われています。中には、政府機関でもWhatsAppでのやり取りが主流となっている例もあります。
こうした状況から、今後は情報の取り扱いに関する明確な線引きがますます重要となり、契約書や社内規定等において細かなルールを定めておく必要が出てくるでしょう。
ITインフラや技術・知識は成熟しているものの、少子高齢化により人材不足に直面している日本。一方、人口が多く若者に恵まれているものの、ITインフラに課題を抱えるインドネシア。両国は異なる課題を抱えているからこそ、補完し合い、協力関係を築くことができると考えています。