作成者 :小川 翔司
皆さま、こんにちは。
当ブログをご覧いただき、ありがとうございます。
Japan Asia Consultantsの小川です。
インドネシアで働く皆さまは、就労ビザを取得し、ITAS(暫定居住許可)を保有したうえで滞在されているかと思います。なかには、インドネシア人の奥様・旦那様をスポンサーとして、ITAP(定住許可)を保有している方もいらっしゃるでしょう。いずれの許可も、外国人である私たちにとっては長期滞在するために欠かせないものですが、手続き上の煩雑さは避けられません。ITASは毎年、ITAPでも5年ごとに更新手続きが必要になります。
こうした中、インドネシア出入国管理局が2025年11月19日、「インドネシア・グローバル市民制度/Global Citizenship of Indonesia(GCI)」と呼ばれる新たな滞在制度の導入を発表しました。この制度は、これまでになかった「無期限」での滞在・就労許可を外国籍者に付与するという、非常に大きな変化をもたらすものです。
そこで本記事では、インドネシア・グローバル市民制度について、私見も交えながらご紹介します。
・制度の概要
GCIは、かつてインドネシア国籍を持っていた人や、その家族・子孫など、インドネシアと深い関係を有する外国籍者に対し、インドネシアでの自由な居住と就労を認める制度です。申請に通れば、無期限での滞在許可が付与され、自由な就労が認められます。内容を見る限り、諸外国における一般的な永住権に相当するものと考えられます。ITAPは「永住権」と称されることもありますが、実際には滞在許可にとどまり、就労のためには別途スポンサーとなる企業が必要でした。その意味では、今回の制度により、ようやくインドネシアにも「永住権」と呼べる制度が誕生したと言えるでしょう。
・導入の背景
インドネシアは原則として多重国籍を認めていません。しかし、元インドネシア国籍者やその血縁者は、今もなおインドネシアとの深い結びつきを持っています。政府としては、こうした人々に、国籍制度上の制約を回避しながら、再びインドネシアに戻って働き国に貢献してもらう選択肢を提供しようとしているようです。
また、今年は、「Kabur Aja Dulu(とりあえず逃げよう)」という言葉がトレンド化し、若者が海外に活路を求める現象が話題になりました。ミーム的な要素も強いものの、若い頭脳や労働力の海外流出に繋がるという側面も否めません。こうした現象がメガトレンド化してしまうと、将来的な国力の低下に繋がる懸念もあるでしょう。政府がGCIの導入に踏み切った理由の一つとして、こうした社会的状況が少なからず影響しているのではないかと、個人的に感じています。
・対象者と申請方法
申請対象となるのは、インドネシアと強い関係を持つ外国籍者です。具体的には、以下の方々が対象とされています。
・元インドネシア国籍者
・元インドネシア国籍者の血縁者(2世代目まで)
・インドネシア国籍者あるいは元インドネシア国籍者の合法的な配偶者
・インドネシア国籍者と外国籍者の合法的な婚姻より生まれた子供
なお、ITAPでは婚姻後2年の経過が申請の条件にありますが、GCIにおける「合法的な配偶者」については、現時点で具体的な婚姻期間の要件は定められていないようです。イミグレの担当者からは、「現インドネシア国籍者の配偶者は対象にならない」との話もあります。制度設計や実務がまだ整備中であることを踏まえると、運用の過程で条件が追加される可能性は十分あるでしょう。加えて、外国の情報機関や軍に在籍していた者は対象外とするなど、国防上の観点から合理的な制限も設けられています。
申請手続きはオンラインで完結可能とされ、インドネシア移民総局のe-VISAウェブサイト上から、以下を一括して登録することできるとされています。
・一時滞在ビザの発行
・永住許可への切り替え
・永住許可の無期限の延長(実質的に更新不要と解釈します)
・無期限の再入国許可
制度が発表されたばかりで、現時点ではまだまだ不透明な点が多いのも実状です。名称こそ「Citizenship(市民権)」とはいうものの、国籍を付与する制度ではありません。実質的には永住権に相当するもので、場合によっては取り消しとなる可能性も十分あり得るでしょう。とはいえ、インドネシアに住む外国人の一人として、永住権取得の道が開かれたということは、純粋に歓迎すべき変化だと感じています。
皆さまの中にも、GCIの対象者となり得る方がいらっしゃるかもしれません。私自身は残念ながら要件を満たしておりませんが、「我こそは」と思う方は、ぜひ「インドネシア・グローバル市民」として名乗りを上げてみてはいかがでしょうか。
弊社では、管理業務全般にわたり、日本企業の皆さまの現地事業をご支援しております。就労ビザを中心とした各種ビザ申請のサポートも行っておりますので、お困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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