作成者:町田純一
今回はインドネシア人の二輪車の維持費についてお話させて頂きます。
販売台数に目が行きがちな二輪車市場ですが、購入した後もランニングコストが発生します。日本人の感覚から金額感の印象と感想を述べたいと思います。
弊社スタッフの実際の支払いと日本での通勤で使用した場合の維持費について比較します。
比較項目は車両価格(新車)、メンテナンス費用(タイヤ、エンジンオイル、フィルター、ブレーキパッド等の消耗品)、税金、駐車料金、保険料のランニングコストを月額に換算した金額を下記表にまとめております。
比較対象車両として、インドネシアからは国内で一番売れている・安価で燃費が良く壊れにくい国民的バイク Honda Beat、日本からは通勤・街乗り用途の一般消費者向けバイクHonda Dioを選択しました。どちらの車体もスクータータイプのバイクで老若男女手軽に扱える、また、排気量も110ccで日本の通勤車体として使われる原付二種に相当します。
先進国と途上国では排ガス規制や安全、保安装備、関税の差により、車両の価格差があります。
また金額比較の為、通貨はIDRに換算しました(2025年6月26日 1 円 =112.16)。
インドネシア人の維持費
弊社スタッフの中には Honda Beat を使用し、ブカシからジャカルタまで通勤している者がいます。往復距離は約40kmで、プライベートでの使用も含まれます。
ランニングコストは以下のとおりです。
給油は4日に1回、3.5LのPertalite(補助金対象ガソリン)を給油しています。
前後タイヤ交換:2〜3年に1回、オイル交換:月1回、オイルフィルター交換:5か月に1回、ブレーキパッド(前後):1〜2年に1回、BPKB(車両証明)・車両税は年1回の支払い、駐車場はオフィスで月額契約をしています。車体は新車で購入し、1年の分割払いで完済済みです。車体価格17,000,000 ルピア、利息金額は5,000,000 ルピアで実質年利は29%となります。
金利が非常に高く設定されているのは、保証や担保なしでも貸し出せるように設計されているためです。特にバイクの分割払いでは、利用者の信用情報が十分でなくてもローンを組めるようになっており、そのリスクを金利に上乗せする形でカバーしているからです。
また、特に驚いたのは、バイク保険への加入意識の低さです。
四輪車は保険加入が増えている一方で、バイクに対しては保険を掛ける習慣がほとんどありません。仮に保険を掛けるとしても、事故や損害ではなく、盗難保険が主流とのことです。保険会社によって差がありますが、日本のような補償内容に近づけるプランをインドネシアで加入する場合は年額約2,000,000 ルピアと高価です。
つまり、人の命が物よりも安い、または車体価格と同等価値になっているとも取れます…
日本人の維持費
比較対象として、日本で Honda Dio を購入し、川崎〜渋谷間を往復40km通勤する場合を想定しました。車体は新車価格258,000円で購入し、年利5%の1年の分割払いで完済を想定します。合計額は264,240円で(利息金額は6,240円)となります。
ランニングコストはガソリン:レギュラー180円/L、月800km走行、オイル交換:3,000kmごとに1回、消耗品(ブレーキ、ベルト、タイヤ等):年1回交換を想定、保険:自賠責保険および任意保に加入、軽自動車税:原付2種として年間2,400円となります。また、原付二種の月極駐輪場についても調査したところ、渋谷駅周辺での月額1万円前半台が相場であり、電車の定期券1カ月(川崎駅-渋谷駅の9,620円)と比較するとあまり差がないという印象です。
両国での賃金に対する負担割合
インドネシアでは2025年のジャカルタ州の月額最低賃金、日本では2025年の東京都の最低賃金(時給1,163円)を元に、1日8時間・週5日勤務を想定し、手取り額をルピア換算し比較を行いました。
1年目は、車体代金の分割返済があるため、インドネシア側の負担は一時的に高くなりますが、2年目以降は両国とも所得に対する維持費の負担割合はほぼ同水準となります。
インドネシアでの1年目の負担率が日本と比較して20%近く多い為、生活費を圧迫しないよう事前にある程度の貯金をしてから車体の購入をするべきではあります。
この結果を見ると、日本においても二輪車は今なお“経済的な移動手段”と捉えることができると言えます。もちろん、これに加えヘルメットや雨具の購入等の費用発生、天候に左右はされること、世間的なバイクへの偏見や事故のリスクはありますが、刃物と同様使い方誤らなければ、依然として便利な道具であることは変わらないと個人的には思います。